2013/02/23

建築逍遥 「海と渚の博物館」

若くして肺を煩い闘病生活を送ったことがある。医師から、美味しいものを食べて散歩でもしていなさいと言われ、有り余る時間を、読書と散策と設計コンペに費やした。その中で、幸運にも「セントラル硝子国際建築設計競技」に入賞、私の案を押してくださったのが内井昭蔵先生だった。

海の暮らしを紹介するこの博物館は、県内にある先生の作品。なんといっても圧巻は、船を裏返したような屋根の小屋組みだ。先生は晩年の仕事でコンピュータを駆使しており、おそらく「からくり記念館」同様、この複雑な曲線の架構を、その技術と遊びながら設計されたのではないかと思う。たっぷりとした三次曲面の屋根は、先生の大らかな人柄と重なるものを感じる。建築が海のやさしさと厳しさの両面を表現しているように思う。

この4月から能登有料道路が無料化となる。展示内容は体験型なので、建築関係のみならず家族連れや観光客にも楽しめる内容だ。白尾インター下車、西田幾多郎記念館の近くなので、ぜひとも多くの方に訪ねていただきたい施設である。