2013/01/19

「一笑」 染め帯


東山に「一笑」が出来てからもう随分時間が経った。1994年の夏、一笑は加賀の丸八製茶場の金沢店として計画され、朽ち果てた町家を改修してオープンした。店舗には喫茶と茶葉の販売に加えて、小さなギャラリーを備えていて、茶器を中心に加賀能登の作家の作品が展示され、大いに賑わった。
店名の由来となる小杉一笑は藩制期金沢の俳人。それもあって二階座敷では句会、花会、茶会と
様々な和の催しが開かれてきた。ミセ・マチ・ヒトを育てることが「プロジェクト・一笑」の命題だった。

今回は加賀友禅。染め帯講座ということで、着付けの専門家・大久保信子さんを講師に、着物にぞっこんの20名が参加した。ほの暗い座敷に広げられた染め帯の数々は、まさに陰影礼賛の世界。金沢ではこのように、長く暗い冬の室内で華やかな友禅や九谷を愛でてきたのだろう。季節の移ろいを衣食住に楽しみ、合わせたり、揃えたり、競ったりと、着物を楽しんだのだろう。民間企業の一店舗ではあるが、このような活動を通して金沢は民度が高まり、歴史都市として分厚く成長してゆくのだろう。

作品詳細は、こちら。





















2013/01/17

「今井金箔」 等伯

1月17日、今井金箔本店ギャラリーで「西のぼる 等伯挿絵展」が始った。
と、その日の朝刊に、安部龍太郎さんの「等伯」が直木賞受賞の報道・・。企画と受賞が偶然か必然かシンクロして、とても驚きうれしく思った。

展示される挿絵は、「等伯」が日経新聞に連載された際、西のぼるさんによって描かれたもの数十点。能登出身の西さんにとって、長谷川等伯という同郷の絵師に向かい合う仕事は、格別のものだったと思う。作品はいづれも極限まで引き算された簡潔なもので、それが情感溢れる日本的な色彩で描かれている。その中に、これはおそらく等伯へのオマージュのような、西さん独自の松林図があり、心に残った。

美しい原画と金箔にプリントされた作品を、ぜひこの機会に多くの方にご覧いただけたらと思う。
今井金箔本店 水曜休み 2/26まで)


作品詳細は、こちら。



2013/01/07

「今井金箔」 虫篭

2013年は本日が仕事始め。
みなさま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今日は参詣といくつかの挨拶廻りの後、2010年に設計した「今井金箔・本店」へ伺った。昨年末、店内に小さな部屋を増設したので、その様子も見たかった。
部屋は一坪たらず。その小部屋で二人の若い女性が、箔の縁付けという作業に精を出していた。薄く打ち延ばされた箔の厚さは一万分の一ミリ、気流でフワフワと勝手に動き出す始末。それを竹の箸で掬い取るや、ふうーっ、と息を吹きかけて一気に台へと移してゆく。さらにそれを専用の道具で裁断して行くのだが、この一連の所作が流れるように美しく、どこか呪術的で見惚れてしまった。
虫篭のような小部屋がキルヒャーの実験室みたいに使われていて、うれしくなった。

作品詳細は、こちら。







帰り際にインフォメーションを貰った。

「西のぼる 等伯挿絵展」 1/17から今井金箔本店ギャラリー






















西さんは珠洲出身の挿絵画家で、いまや歴史時代小説の挿絵では第一人者である。
随分前になるが、東山に「一笑」を設計したとき建築を気に入っていただいて、来沢の小説家の方に引き合わせていただいたり、一緒に四国へ旅行したりと可愛がって頂いた。
今回は、新聞に連載された安部龍太郎氏「等伯」の挿絵を金箔にプリントしたものが数十点展示される。今井さん独自の企画ながら、なんだかご縁の連鎖を感じる。