2013/08/18

「いつかの風景」  長谷川銀・個展

普段、暮らしの中で 「ああ、」 と目にとまる一瞬というものがある。


犀川の川辺に仕事場を構えてもう20年になろうとするけれど、今だに季節の移ろいの中で感じるちょっとした変化や、今なら夏の日差しの中にある草いきれとか、鳥や草や虫の気配に立ち止まったりする瞬間がある。
たとえばそんな一瞬を捉えて表そうとする、長谷川銀さんの個展に伺った。

銀さんはもともと油絵を専攻されたそうだが、その作品は写真・絵画・造形と手法を選ばない。ともかく自身の身体が捕らえたその美しい一瞬を、複数の手段を使って表現し、共有しようとするもののように思えた。

蔵に展示された平面作品では、薄布にプリントした写真の裏にペイントを加えることで、「表面」に薄い深さが生まれ、その一瞬を 「思い出すように」 再現しているのが印象的だ。

さらにインスタレーションでは、(これは驚くべきことなのだが、)会場となる民家の庭の光や、座敷の空間に注目し、その「作品」によって場所にほんの少しだけ手を入れることで、うつくしく輝くような気配を実現して素晴らしかった。

場所の空気感を設計することは、建築の大きな目的のひとつであり、彼女がそこに気づき表現しようとしていることに驚いたし、とても新しいものを感じた。


@ 石川国際交流サロン・金沢市広坂1-8-14  8月25日(日)まで