2014/04/19

「希望の壁」 

JR大阪の北側に位置する「梅田スカイビル」、その足元に造られた安藤忠雄さん設計の緑化壁「希望の壁」に立ち寄った。

この壁は新梅田シティの20周年を記念して、運営管理者である積水ハウスが建設したモニュメント。
ところが、建設の際同ビルの造園設計者から、この緑化壁は著作権侵害との理由で、設置の指し止め請求を申請され、ネットを賑わしていた。さらに完成後は、緑化壁はただのプランター置き場に過ぎないなどと揶揄され、気にかかっていたのだった。

実際に現場に立ち、私見ではあるけれど感じたことは、この緑の壁は周辺の環境を丁寧に読み、隣接するの庭園との間をおきながら共存し、都市的風景までもを再構成した仕事だということだ。

壁は3mほどの厚さがある鉄骨造の建築で、内部にはメンテナンス用の床と給排水の設備が設けられ、植物の管理がスムーズにできるよう作られている。

「動線を分断する巨大な壁・・」などと聞いていたのだが、全長78m・高さ9mの壁のスケールは絶妙で、壁に空けられたいくつかの開口部のプロポーションが美しい。人の通りも風の通りもよく、むしろ超高層の足元でそのサイズは、やや遠慮気味ではないかと思えるほどだった。

よく言われることだが、建築は見なければ分からない。そしてそれは、ネット上の評価にも言えることだとあらためて感じた。





2013/08/18

「いつかの風景」  長谷川銀・個展

普段、暮らしの中で 「ああ、」 と目にとまる一瞬というものがある。


犀川の川辺に仕事場を構えてもう20年になろうとするけれど、今だに季節の移ろいの中で感じるちょっとした変化や、今なら夏の日差しの中にある草いきれとか、鳥や草や虫の気配に立ち止まったりする瞬間がある。
たとえばそんな一瞬を捉えて表そうとする、長谷川銀さんの個展に伺った。

銀さんはもともと油絵を専攻されたそうだが、その作品は写真・絵画・造形と手法を選ばない。ともかく自身の身体が捕らえたその美しい一瞬を、複数の手段を使って表現し、共有しようとするもののように思えた。

蔵に展示された平面作品では、薄布にプリントした写真の裏にペイントを加えることで、「表面」に薄い深さが生まれ、その一瞬を 「思い出すように」 再現しているのが印象的だ。

さらにインスタレーションでは、(これは驚くべきことなのだが、)会場となる民家の庭の光や、座敷の空間に注目し、その「作品」によって場所にほんの少しだけ手を入れることで、うつくしく輝くような気配を実現して素晴らしかった。

場所の空気感を設計することは、建築の大きな目的のひとつであり、彼女がそこに気づき表現しようとしていることに驚いたし、とても新しいものを感じた。


@ 石川国際交流サロン・金沢市広坂1-8-14  8月25日(日)まで





2013/08/01

「大阪工業大学」  2012・夏



 「後輩のために、一肌脱いでくれませんか・・」

ちょうど一年前の夏、母校から突然の問い合わせがあった。
現在大学では、授業で取り組んだ課題をさらにブラッシュアップして、一年にいちど学外の審査員によって最優秀案を決める 「全体講評会」 を開いていて、今年はぜひ審査に参加して欲しいという。大学が私のような者の存在を知っていたことにまず驚いたが、懐かしくもあり快諾した。

久しぶりのキャンパスは増改築により高層化していて、当時の面影はまるでない。15階の審査会場へ向かう。そこからは淀川の蛇行や遠くに生駒山が展望できて、まるでホテルのラウンジのようだ。

審査員は、広島在住の気鋭建築家・谷尻誠さん、OBであり安井建築事務所で海外のビッグプロジェクトを手がける畑正俊さん、と私の3名。審査にはそれぞれの考え方の差が現れて、とても刺激的な経験をした。

審査することは、同時に審査されることでもある。
大きなエネルギーを注ぎ真剣に取り組む若者の作品を前にすれば、 「 一肌脱ぐ・・」どころか、自身の考え方や嗜好や、もしかしたら人格まで全てを裸にせざるをえない、それは厳しい場に立たされることになったのだった。








































































































2013/07/15

「石川建築賞」

昨年竣工した「伏見台の家」が石川建築賞・優秀賞を受賞し、表彰式に出席。

表彰の後、審査委員長による受賞作品の講評があった。
この建築については、街や公園との関係を積極的に設計に取り入れていることや、建築主とのよい関係をつくることでその家族ならではの暮らしをデザインしていること、などが評価されたそうでとてもうれしく思った。

式に引き続き懇親会があり、建築主ご家族や施工に当たった「みづほ工業」も参加し、共に苦労を振り返り喜びを分かち合った。さらに、子供たちからサプライズの手作り表彰状(ダンボール製立体飛び出し式!)を頂いたりして、これにはすごく感激した。

その数日後、友人が集まって祝杯を挙げてくれる。写真の焼き物はそのときのプレゼントで、九谷焼き作家・山下一三さんの手作り。「伏見台の家」の「ふ」の文字が断面になった筆置き。

どちらも世界にひとつしかない贈り物、大切にいたします。





2013/05/25

「明るい庭」

庭がきれいだというので、お願いして「伏見台の家」の撮影をさせて頂いた。暮らし始めて一年後の撮影は、協力していただけるだけですごくありがたいものだが、この日はきれいに掃除をし飾り付けをして、ご家族で待っていて下さった・・。


















この住まいは、中庭を持つコートハウス。
写真右手には公園があって、2階のリビングからはその大樹と遠くに山並を望むことができる「借景の家」でもある。駐車スペースをいくらか緑化することで、公園が少しだけ広がったように感じられたらいいなと思った。










































前庭の一部は菜園になっていて、いくつかの野菜が草花といっしょに植えられている。
デザイン的には花壇の小口を薄く見せているところがミソ。土間はコンクリートを洗い出して骨材を見せ、素材感を出している。










































隣接するアパートの間を、小さな草花のあるアプローチとした。
途中に段があり、その手前に水盤をしつらえてある。エントランスまでの長い距離は
正面にアイストップとなる樹を置くことで、楽しいものに変えることができる。日本庭園からの教え。










































「玄関は小さく」、と言ったのは村野藤吾先生。「玄関にシャラシャラとした光が入ったら成功、」と言ったのは斉藤裕氏。中と外をつなぐエントランスは、待ち受け画面のよう。










































コート掛けのフックに手作りの可愛いオブジェが掛けられていた。思いがけない使い方をしてくれるのを見るのは、家をいっしょに作っているようで、すごくうれしい。









































中庭のメリットは、ひとつの樹を複数の部屋から楽しむことができるところ。 道路からの視線を気にすることもなく窓を開け放すことができ、部屋に光と風を運んでくれる。  

全ての部屋にデッキがあるので、庭へ出たり、木に触れたり、そのまま隣の部屋へ移動したりできる。

                                                                            




































2階には広いデッキがふたつあり、外部階段で1階とつながっている。
ご家族にはこの夏に向けて、デッキに朝顔の緑化テントを架けるプロジェクトがあるそうだ。どんな風になるのか今から楽しみ。
2階デッキからの光景。
壁の手前が中庭で、向こうが公園。景色は官民境界をまたいでつないでいる。

日本には「借景と」言う言葉があるけれど、景色の貸し借りとはおもしろい。
ならばどうやって返すか、そこが問題だ。 

作品詳細は、こちら。